連載TECH-chart

スクラバーに関する様々なトピックを定期連載していきます

26.搭載エンジニアリング7(短絡電流)                            2018.12.07 UP

就航船にスクラバーを搭載する際には既装備の遮断器で適切に短絡電流を遮断できるか工事前に確認する必要があります。

船には船内の電気機器に給電するするために発電機が装備されています。発電機で発電された電気を配電盤/分電盤経由で各電気機器へ給電しています。給電経路や電気機器内で、電気が流れる導体同士が接触する短絡事故が発生すると定格電流を大幅に超えた大電流(短絡電流)が流れてしまい、適切な保護装置を持たない場合には、発電機を含め船上の電気機器が復旧不可能な損傷を受けたり、電気機器から火災が発生するなどの危険があります。そのような事態を避けるため、配電盤/分電盤内に適切な遮断器(ブレーカ)を装備し、事故点を速やかに切離し、他へ影響を与えないようになっています。 就航船にスクラバーを搭載する際には比較的大容量の海水ポンプが追加されるため、これによって短絡電流も増えることになります。この増えた短絡電流を既装備の遮断器で適切に電気機器から遮断できるか工事前に確認する必要があります。

25.搭載エンジニアリング6(艤装数)                            2018.11.28 UP

搭載エンジニアリングの初期段階で「艤装数」への影響を確認し、付帯工事を最少にする設計アプローチが必要です。

船には海上で潮流や風にさらされながらもその場に留まるために、錨・錨鎖や係船索など「係船設備」が備えられています。この係船設備の数や強さは、「艤装数」と呼ばれる船が潮流や風から受ける力の大きさの程度を表す数値により決められています。「艤装数」は船級協会規則で規定された計算式により、船の排水量、幅、満載喫水線上の側面積などから算出されます。船内にスクラバータワーを搭載するために、タワーを格納する大きな構造物を新設または増設する場合、この構造物が「艤装数」に影響を及ぼすケースが少なからずあります。「艤装数」が規定値以上になると、係船設備の変更を要求されますので、搭載エンジニアリングの初期段階で「艤装数」への影響を確認し、付帯工事を最少にする設計アプローチが必要です。

24.搭載エンジニアリング5(復原性)                            2018.11.21 UP

船は船体にかかる重力と船体が押しのけた水が元に戻ろうとする力(浮力)がバランスすることにより海の上で姿勢を保っています。

船は、波や風などの外力を受けて傾くと、もとの姿勢に戻ろうとします。
この元に戻ろうとする力は、重心(船の重さの中心)と浮心(浮力の中心)の位置関係を元の状態に戻そうとする復原力であり、重心が低いほど「復原力」が増し船が安定します。
スクラバータワーは背が高く船の上部に設置されますので、ほとんどのケースで船の重心位置が上昇し、「復原力」は減少します。従ってこれまでの一般的な修繕工事などとは設計アプローチが異なり、船の基本性能として「復原性」を再検証し、スクラバーシステム搭載後も安全に航行できるよう慎重に搭載エンジニアリングを進める必要があります。

23.搭載エンジニアリング4(共振)                            2018.11.14 UP

機器や構造物にはそれぞれ固有の揺れやすい周波数(固有振動数)があります。

外部からこれを揺らそうとする起振力の周波数(起振周波数)が固有振動数に近くなると、機器や構造物が急激に大きな振動をする共振と呼ばれる現象を起こします。この共振が起こると機器や構造物が大きく揺らされ、船であれば乗り心地が悪くなったり、各種装置や船体構造の機能に有害な影響を与えることがあります。 基本的にスクラバーシステム要素機器配置は起振源が多い船尾区画(プロペラの影響)や機関室(ディーゼルエンジン等の影響)に計画されることになり、特にスクラバータワーは背が高く船の上部に設置されますので、これまでの一般的な修繕工事などとは設計アプローチが異なり、数値シミュレーションなどにより固有振動数を把握し起振周波数との共振を回避しておくことが重要です。

22.IMO海洋環境保護委員会第73回会合(MEPC73)                            2018.11.07 UP

国際海事機関(IMO)の海洋環境保護委員会は2018年10月22~26日に開いた会合(MEPC73)で、船舶燃料に対する国際的な環境規制を強化することで合意しました。

これまでに2020年1月から硫黄分が0.5%を超える燃料の使用を禁止することが決まっていましたが、2020年3月からは燃料に使用する目的で硫黄分が0.5%を超える燃料を「保持」することも禁止されます。2020年から始まる燃料規制を徹底する狙いです。

21.搭載エンジニアリング3(電力積上げ)                            2018.10.31 UP

新造船を計画するときは船上に搭載する電気機器をリストアップし、これに必要な電力を積算して発電機の容量を決めますので、スクラバーシステムに必要な電力も最初から計算に加えておけばあまり問題にはなりません。

多くのレトロフィットのケースでは、対象船の新造計画時にスクラバーのことなど考慮していないのが普通ですから、発電機がどの程度余裕をもって計画されているかでスクラバー搭載の難易度が大きく変わります。弊社ではこれまでスクラバーシステムのレトロフィット検討を70件程度行ってきましたが、発電機容量が不足するためスクラバーを搭載できない事例は全体の10%以下でした。

20.搭載エンジニアリング2(3次元レーザースキャナーによる配置検討)                             2018.10.24 UP

3次元レーザースキャナーは、測定対象空間にレーザーパルスを照射し、対象空間に存在する船殻・配管・補機器等測定対象物に反射して帰ってきた反射波と照射波の位相差を比較することで反射点までの距離を算出します。またレーザーを発射した角度から反射点の位置を特定します。

このレーザーパルスの照射を連続的に行い数千万点の位置と距離情報もつ反射点を集めて3次元表示すると測定対象物の輪郭がくっきり見えるようになります。最近では安価なレーザースキャナーも出てきており、スキャン自体はだれでも手軽にできるようになってきました。重要なのはその先の話で、この「点群データ」をもとにいかに早く、正確に工事図面と配管などの生産図面を作れるかがエンジニアリングの質を左右します。当社グループでは3次元レーザースキャナーを活用した原子力発電プラントの改造工事を10年程前から行っており、その手法やノウハウを活用してこれまで自動車運搬船、コンテナ船、大型タンカー、バルクキャリアー等多くのレトロフィットエンジニアリングを行ってきました。2018年8月に行ったスクラバー搭載のための3次元レーザー計測では、本船の停泊時間が短く、かつ広範な空間データが必要になったため、レーザースキャナーを船内に2台持ち込み並行して計測することでお客様のご要望に応えることができました。

19.搭載エンジニアリング1(機関背圧)                             2018.10.17 UP

機関排ガス過給機出口の背圧(過給機出口から煙突開口端までの通り抜けにくさ)は機関負荷(ガス量)の増大に伴って上昇します。

背圧が変動すること自体はスクラバー搭載の有無にかかわらず起こることなので問題ではありません。注意が必要なのは機関排ガス過給機出口の”最大”背圧です。最大背圧は各機関毎に推奨値があります。背圧は排ガス管口径、曲げや合流・分岐形状などによっても大きく変わります。特にスクラバーレトロフィットの場合は更に配置上の制約も加わるため、新造時とは異なる特別な配慮が必要になります。

18.IMO EGCSガイドライン(SOx排出規制値)とは何?                             2018.10.10 UP

MARPOL条約(International Convention for the Prevention of Pollution from Ships:海洋汚染防止条約)附属書Ⅵ第14規則では、 ECA以外の一般海域においても2020年1月1日以降硫黄分が0.5%を超えない燃料油を使用することが規定されています。また第4規則ではこの燃料油中硫黄分を規制するのと同等の効力を有するスクラバーをはじめとする排ガス浄化装置の使用が認められています。

排ガス浄化装置ガイドライン(IMO MEPC.259(68)”2015 Guidelines for Exhaust Gas Cleaning System”)ではこの「同等の効力」を証明するため浄化装置出口排ガスのSO2(ppm)/CO2(重量%)比を用いた評価をするよう規定されていて、硫黄分濃度3.5%、0.5%、0.1%の燃料油を燃焼させた場合のSO2/CO2比はそれぞれ151.7、21.7、4.3とすることもあわせて定義されています。

排ガス浄化装置の性能は「脱硫率」という指標で表され、例えば硫黄分濃度3.5%の燃料油の使用に際し、硫黄分濃度0.1%燃料油燃焼時相当のSOx排出量まで排ガスを浄化する装置の脱硫率は(151.7-4.3)/151.7x100=97.2% になります。

17.燃料油硫黄分の規制対象となる船内機器は何?                             2018.10.04 UP

MARPOL条約(International Convention for the Prevention of Pollution from Ships:海洋汚染防止条約)附属書Ⅵ第14規則では、船舶で使用される全ての燃料油に適用されます。

主機関、発電機関はもちろんIGG(Inert Gas Generator)、ボイラー、焼却炉も規制に適合した燃料油の使用が要求されます。

但し、IMO EGCS ガイドラインでは焼却炉は適用対象外になっています。これは燃料油ではないものも燃焼するため、燃料油中の硫黄分濃度と排ガス中のSO2/CO2を使用した評価方法が適用できないためです。 また非常用発電機関を訓練、作動確認及び非常時以外で使用する場合においては規制に適合した燃料油の使用が要求される可能性がありますので注意が必要です。

16.SOxスクラバー搭載によるメリットは?投資回収期間は?

スクラバーを搭載することで比較的安価な高硫黄C重油など従来燃料の継続使用が可能となり、燃料費を削減することができます。

低硫黄燃料は従来燃料に比べて高価です。
スクラバーを搭載することで従来燃料の継続使用が可能となり、低硫黄燃料を使用した場合に比べて燃料費を抑えることができます。

弊社の検討例では、スクラバー設置の投資回収期間は2年から5年と試算されるケースがほとんどです。

15.必要なメンテナンスを教えてほしい。

センサー類の校正及び定期点検があります。
ダンパ、ファン、ポンプ等の機器は通常のメンテナンスが必要です。

タワーについては可動部がなく、通常の使用ではメンテナンスはほぼ必要ありません。

シールエアファン、ポンプ等の回転機器は定期的なメンテナンスが必要です。
また、監視装置(センサー類)はコンプライアンスを担保するため、定期的な校正がガイドラインで規定されています。
尚、詳細な点検要領は監視装置メーカー標準に従うことになります。
排水については、本船更新検査毎にサンプルを取水し陸上の検査機関で硝酸塩濃度を分析する必要があります。

14.スクラバー装置の操作、監視はどうやって行うの?

機関制御室等にタッチパネルを設置し、遠隔操作、遠隔監視します。

タッチパネル式のHMI(Human Machine Interface)を機関制御室に設置しここから遠隔で行います。

通常機関制御室に設置されるHMIには主に以下機能が備わっています。

  • システムの状態監視
  • システムの自動発停(含主要バルブ開閉・ポンプ発停)
  • 排ガスダンパーの切り替え
  • システム危急停止
  • オープンモードとクローズドモードの切り替え(ハイブリッドシステムのみ)
13.レトロフィットと新造の違いは何?

レトロフィットの場合は、船の既存設備の改造などが必要になります。

スクラバー本体はレトロフィットと新造船での違いはありません。
レトロフィットの場合は、搭載する船側の既存設備改造、船体構造補強などが必要になります。
弊社ではレトロフィット搭載に関するエンジニアリングも行っています。

12.スクラバータワーの材料には、なにを使用しているの?

海水と酸への耐性が求められる為、対腐食性の高い材料を使用しています。

主としてスクラバータワーの材料には2相ステンレスを採用しています。
また、排ガス導入部は高温排ガスと海水が最初に接触し最も厳しい腐食環境となるため、高耐食ステンレス鋼を採用しています。

11.スクラバー装置は何か承認が必要なの?

EGCSユニットの承認を受けるスキームAと、SOx放出量を監視し適合を実証するスキームB、いずれかの承認スキーム適用が必要となります。

MARPOL条約附属書Ⅵ第4規則では、EGCSは搭載船主管庁による承認を受ける必要がある旨規定されています。
IMO EGCSガイドラインではその具体的方法としてScheme-A及びScheme-Bが規定されています。

・Scheme-A:脱硫性能試験結果に基づいてそのEGCS承認し、就航中は運転パラメーターの監視によりその適合性を実証する方法
・Scheme-B:排ガス監視装置を承認し、就航中は監視装置による排ガス性状の連続モニタリングによりその適合性を実証する方法

Scheme-Aによる認証は陸上等でのフルスケール試験を実施する必要があるため、Scheme-Bにより主管庁の承認を受けるほうが現実的なようです。

10.IMO EGCSガイドライン(排水硝酸塩排出基準)とは何?

洗浄水排水の硝酸塩濃度を制限するものです。

以下のいずれか高い方を超えてはいけません。
常時監視の必要はありませんが、船舶更新検査時に硝酸塩排出データを提出できるよう検査の3か月前までに排水サンプルを採取し、陸上検査機関などで分析する必要があります。
・排ガス中のNOx排出量の12%
・45t/MWh洗浄水に対して 60mg/L の硝酸塩濃度

9.IMO EGCSガイドライン(排水PAH排出基準)とは何?

洗浄水排水中に含まれる多環芳放香族炭化水素を制限するものです。

例えば、取水と排水のPAH濃度差が洗浄水量 45t/MWh において 50 µg/L PAHphe を超えてはいけません。
運用中の監視が義務付けられています。

★PAHとはPolycyclic Aromatic Hydrocarbons(多環芳香族炭化水素)の略称です。

8.IMO EGCSガイドライン(排水濁度排出基準)とは何?

洗浄水排水の濁り(Turbidity)を制限するものです。

取水と排水の濁度差が25FNUs 又は 25NTUs を超えてはいけません。
運用中の監視が義務付けられています。

7.IMO EGCSガイドライン(排水PH排出基準)とは何?

洗浄水排水の酸性度を制限するものです。

以下のどちらかを満たすことが求められ、運用中の監視が義務付けられています。
・洗浄水排水のpHは6.5以上(但し操船中及び航行中は取水と排水のpH差が2以内であれば良いです)
・ 船舶が静止した状態で船外排出口から4m先でpH6.5以上

6.IMO EGCS ガイドラインとは何?

IMOで定められた、世界共通の舶用SOxスクラバーの指針です。

MARPOL条約附属書Ⅵ第4規則では低硫黄燃料油使用の代替手段として、燃料油燃焼装置から排出される排ガス中の硫黄酸化物を規制値以下に低減できる装置(EGCS:Exhaust Gas Cleaning System)を使用することが認められています。

この代替装置の指針として、IMO MEPC.259(68)”2015 Guidelines for Exhaust Gas Cleaning System”が採択されており、SOxスクラバーの技術的な要件、運用上の要件が記されています。

★EGCSとはExhaust Gas Cleaning Systemの略です。排ガス浄化装置を意味し、SOxスクラバーもこれに含まれます。

5.海水の性状がスクラバーに影響するの?

スクラバーの脱硫性能は、海水のアルカリ度により影響を受けます。

海水のアルカリ度が低いとSOx洗浄による海水の酸性化に対する緩衝能力も低くなります。
これは海水単位量当たりの脱硫能力が小さいということを意味しますので、アルカリ度の低い淡水域などでは、所定の脱硫性能を達成するために多量の海水が必要になります。

4.SOxスクラバーはどうやって排ガスからSOxを除去するの?

SOxを海水に吸収させて除去します。

排ガス中のSOxは、スクラバー内で洗浄水(海水)と気液接触し海水中に吸収除去されます。
SOxの大部分はSO2(二酸化硫黄)であり、SO2が水に溶解すると亜硫酸水素塩と亜硫酸塩となり、酸素を含む海水中ではこれらが酸化され硫酸塩となります。
生成した硫酸塩は海水中に大量に含まれているものなので海洋環境に対する影響はほとんどないとされています。

SO2 + H2O→H2SO3(亜硫酸)→H⁺ + HSO3 ⁻(亜硫酸水素塩)
HSO 3 ⁻(亜硫酸水素塩)→H⁺ + SO3 ²⁻(亜硫酸塩)
SO3²⁻(亜硫酸塩)+ 1 / 2O2 SO4 ²⁻(硫酸塩)

亜硫酸塩ができることで洗浄水は酸性を帯びますが、海水のアルカリ度によってある程度中和されます。
しかし、一旦海水の持つ中和能力が消費されてしまい酸性度が強くなると海水の脱硫能力が落ちます。
そのため、海水を循環して排ガスを洗浄するクローズドループでは、苛性ソーダなどによりアルカリ成分を適宜補給することが必要になります。

3.SECAとは何?

欧州の北海およびバルト海や北米沿岸海域など硫黄酸化物の排出規制海域のことです。

この海域を航行する船舶は2015年1月1日以降、硫黄分が0.1%を超えない燃料油の使用が強制化されています。
★SECAとは「Sulphur Emission Control Area」の略です。

2.SOxってどんなもの?

燃料油に含まれる硫黄分が燃焼することで発生するガスのことです。

大気汚染による酸性雨やぜんそくの原因の一つにもなっています。
★SOxとは一酸化硫黄(SO)、二酸化硫黄(SO2)や三酸化硫黄(SO3)など硫黄酸化物の総称ですが、IMO EGCSガイドラインでは排ガス中に最も多く存在するSO2が代表物質として規制の対象となっています。

1.船舶の排ガスSOx規制とは何?

マルポール条約(海洋汚染防止条約)附属書VI第14規則により、船舶からのSOxガスの削減の為に義務付けされた規制のことです。

船舶からの排ガスによる大気環境への負荷低減が求められている中、排ガスに含まれる硫黄酸化物(SOx)の排出を抑制するため、船舶が使用する燃料油中の硫黄分濃度に係る規制が段階的に強化されることがMARPOL条約(International Convention for the Prevention of Pollution from Ships:海洋汚染防止条約)附属書Ⅵ第14規則に規定されています。
この規制により欧州の北海およびバルト海や北米沿岸海域など汚染物質の排出規制海域(ECA:Emission Control Area)では2015年1月1日以降、硫黄分が0.1%を超えない燃料油の使用が強制化されました。
また、ECA以外の一般海域においても2020年1月1日以降0.5%を超えない燃料油を使用することが義務付けられます。
MARPOL条約附属書Ⅵ第4規則では低硫黄燃料油やガス燃料使用の代替手段として、燃料油燃焼装置から排出される排ガス中の硫黄酸化物を規制値以下に低減できる装置(EGCS:Exhaust Gas Cleaning System)を使用することが認められています。

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